ヤクザ映画おすすめ20選｜仁義と裏社会を描いた名作から最新作まで

スクリーンに映し出されるのは、華やかな世界ではなく血と汗にまみれた裏社会──。

その荒々しさと生々しさを描いたジャンルこそが「ヤクザ映画」です。

仁義と裏切り、抗争と血の絆。欲望と暴力の渦に飲み込まれる人間模様は、フィクションでありながらも妙にリアルで、観る者を圧倒します。

今回は昭和の任侠映画から北野武の革新作、さらに令和の新鋭まで──映画史に名を刻むガチで名作の「ヤクザ映画」20本を厳選。
人間ドラマとしての深みから、血と暴力の美学まで、幅広く紹介します。

暴力の裏にある「人間の生きざま」を、あなたはどう感じるか──。

ヤクザ映画おすすめ20選｜仁義と裏社会を描いた名作から最新作まで

タイトル	ジャンル	怖さ
仁義なき戦い	実録・抗争
仁義なき戦い 広島死闘篇	実録・抗争
日本の首領	実録・組織劇
極道の妻たち	人間ドラマ・女性視点
ソナチネ	北野武・人間ドラマ
首領への道	任侠・組織劇
新仁義なき戦い	実録・抗争
血と骨	人間ドラマ・社会派
荒ぶる魂たち	実録・暴力美学
無頼	実録・社会派
昭和残侠伝	任侠・美学
暴力街	実録・アクション
ビー・バップ・ハイスクール	不良・抗争
やくざの墓場 くちなしの花	実録・悲劇
新宿乱れ街 いくまで待って	実録・青春
悲しきヒットマン	ヒューマン・実録
アウトレイジ	現代・抗争
アウトレイジ ビヨンド	現代・抗争
アウトレイジ 最終章	現代・抗争
首領（ドン）	現代・実録

仁義なき戦い

公開年	制作国	上映時間
1973年	日本	99分

映画紹介：
深作欣二監督が放った『仁義なき戦い』は、戦後広島を舞台にした実録ヤクザ映画の金字塔。従来の美化された任侠像を打ち砕き、裏切りと暴力が支配する生々しい抗争劇を描きました。主演・菅原文太の鋭い眼差しと存在感は、まさに“暴力の時代”を象徴するものでした。

物語は食うために裏社会へ足を踏み入れた若者が、血で血を洗う抗争に巻き込まれていく姿を描きます。仲間を信じても、次の瞬間には裏切られる──仁義という言葉が空虚に響く世界を、観客は目撃することになります。

手持ちカメラの生々しい映像、ノンフィクションさながらの展開は、ドキュメンタリー的な迫力を放ちます。フィクションではなく歴史の記録を見ているかのようなリアリティが、多くの観客に衝撃を与えました。

ここから実録路線が一気に広がり、日本映画史に大きな転換点を刻んだ一作。ヤクザ映画を語るなら絶対に外せない伝説の作品です。

仁義なき戦い 広島死闘篇

公開年	制作国	上映時間
1973年	日本	100分

映画紹介：
シリーズ屈指の緊張感を誇る第2作。若き狂犬・山中（北大路欣也）と、非情な組長らがうごめく広島の地下社会を、深作欣二がさらに苛烈な筆致で切り裂く。友情と野心、恋と暴力が絡み合い、破滅へと加速していくドラマは一瞬たりとも目が離せない。

戦後の貧困と虚無が生んだ若者の焦燥は、やがて血でしか語れない関係性へと変質していく。手持ちカメラの荒々しさ、断ち切るような編集、爆発的な群集劇──すべてが若さの疾走と破滅を体感させる。

任侠の美談はここにはない。生き残るための裏切りと、消耗していく魂だけがある。前作を受けて世界はさらに濃密に、そして冷酷に深化。シリーズの本質を決定づけた必見の一篇だ。

若さゆえの衝動が銃声に変わる瞬間、その音は観客の胸にも刺さる──。

日本の首領

公開年	制作国	上映時間
1977年	日本	127分

映画紹介：
『日本の首領』は、ヤクザ映画の枠を超えて裏社会と政財界の癒着を鋭く描き出した異色の大作。鶴田浩二が演じる卯木を中心に、組織の頂点をめぐる熾烈な権力闘争が展開されます。単なる抗争劇ではなく、国家をも揺るがす陰謀の渦に巻き込まれる人間たちの姿に圧倒されるでしょう。

シリーズの特徴は、徹底したリアリティと政治性。暴力団の内部抗争を描きながら、同時に「ヤクザは社会の影の縮図である」という視点を提示し、観客に深い余韻を残します。権力者の冷酷な判断、忠誠と裏切りが交錯する構図は、まさに日本映画ならではの群像劇です。

仁義や義理人情といった任侠的美学が影を潜め、現れるのは冷徹な権力の論理。人間関係が「生き残りの駒」として消費されていく残酷さは、観る者に戦慄を与えます。

エンタメを超えた社会派映画として、今なお強い存在感を放つ一作です。

極道の妻たち

公開年	制作国	上映時間
1986年	日本	125分

映画紹介：
『極道の妻たち』は、これまで男性視点で語られてきたヤクザ映画に一石を投じた革新的な作品。女性の目線から裏社会を描き出し、組織を支える妻たちの強さと哀しみを鮮烈に浮かび上がらせました。主演・岩下志麻の冷徹で気品ある存在感は、日本映画史に残る名演とされています。

夫を支え、時に抗争の矢面に立たされる極道の妻たち。愛と忠誠、そして生き延びるためのしたたかさが、男社会を揺るがすほどの迫力で描かれます。これまでの「任侠＝男性」という固定観念を覆し、裏社会の別の顔を鮮やかに提示しました。

暴力描写のリアリティもさることながら、真に恐ろしいのは妻たちの静かな決断や覚悟です。時に男以上に非情になり、時に母としての優しさを見せる──その二面性が作品に深い厚みを与えています。

シリーズ化され社会現象となったのも納得の一本。女性の立場からヤクザ映画を見る新たな視座を開いた名作です。

ソナチネ

公開年	制作国	上映時間
1993年	日本	94分

映画紹介：
北野武監督の代表作にして、世界にその名を知らしめた傑作『ソナチネ』。沖縄を舞台に、抗争に疲れたヤクザたちの虚無と静かな狂気を描いた作品です。従来の派手な抗争劇とは一線を画し、淡々とした時間の中に潜む死の気配が観客を圧倒します。

主人公・村川（ビートたけし）は、組の抗争処理のため沖縄へ赴くが、やがて組織の思惑に翻弄され、避けられない破滅への道を歩んでいきます。浜辺での遊びや静かな時間の中に漂う不穏さが、観る者の心を締めつけます。

銃撃戦や暴力のシーンは突如訪れ、その冷たさと即物的な残酷さが強烈な印象を残します。暴力の衝撃と、日常の無垢さとの対比こそが本作の真髄であり、北野映画の美学がここに凝縮されています。

世界の映画祭で絶賛されたのも頷ける、静けさと死が隣り合わせに存在する唯一無二のヤクザ映画です。

首領への道

公開年	制作国	上映時間
1991年	日本	103分

映画紹介：
『首領への道』は、哀川翔と中条きよしを主演に迎えた人気シリーズの第1作。バブル崩壊前夜の日本を背景に、下っ端から成り上がろうとする若きヤクザの野心と、組織の非情な論理を描き出した作品です。派手さよりも人間関係の機微に焦点を当て、Vシネマ全盛期を代表するタイトルとなりました。

哀川翔演じる主人公は、血気盛んな若者として抗争に身を投じながらも、やがて組織の冷酷な現実を思い知ることになります。忠誠と裏切りのはざまで揺れ動く姿がリアルに描かれ、観る者の胸に迫ります。

銃撃や抗争シーンも盛り込まれていますが、最大の見どころは人間模様を丁寧に描いたストーリーテリング。男同士の信頼、嫉妬、裏切りが絡み合う群像劇は、地味ながらも強い余韻を残します。

Vシネマの成功を決定づけ、その後シリーズ化されるほど支持を集めた本作。90年代の空気感を味わえる一本です。

新仁義なき戦い

公開年	制作国	上映時間
1974年	日本	102分

映画紹介：
『仁義なき戦い』シリーズの成功を受けて制作されたリブート的作品が『新仁義なき戦い』です。前シリーズと直接の繋がりはありませんが、実録路線の流れをさらに推し進め、暴力と裏切りが渦巻く昭和ヤクザ社会を鮮烈に描き出しました。

主演は再び菅原文太。異なる役柄ながらも、その存在感は圧倒的で、血と欲望の世界で生き抜こうとする男の矛盾と葛藤を体現しています。深作欣二監督ならではのテンポの速い編集とドキュメンタリータッチの演出が冴えわたり、観客を抗争の真っ只中に引き込みます。

本作では任侠の理想は完全に崩壊し、暴力＝生存戦略という冷徹な図式が前面に押し出されています。仁義を掲げても、結局は生き残るための道具にすぎないという現実が突きつけられます。

シリーズ本編とはまた違う切り口で、実録ヤクザ映画の持つ迫力と泥臭さを堪能できる一作です。

血と骨

公開年	制作国	上映時間
2004年	日本	140分

映画紹介：
井筒和幸監督が手がけ、ビートたけしが主演した衝撃作『血と骨』。戦前から戦後を生き抜いた在日朝鮮人の男・金俊平の半生を描くこの作品は、暴力と支配に生きる人間の凄まじいエネルギーをスクリーンに叩きつけます。暴力団映画という枠を超え、人間の「生きる力」と「業」を正面からえぐり出す社会派大作です。

俊平は家族をも支配し、恐怖で縛りつけながら生き続ける。その姿は父であり、夫であり、同時に怪物のようでもあります。家族を追い詰めながらも圧倒的なカリスマを放つ主人公の存在感が、本作をただの暴力映画ではなく普遍的な人間ドラマへと昇華させています。

暴力や虐待の描写は徹底的にリアルで容赦がなく、観る者に深い傷跡を残すでしょう。しかし、その中で「人はなぜ生きるのか」「何を残すのか」という問いが静かに浮かび上がります。

ヤクザ映画的な要素を内包しつつ、人間の本質に迫った重厚な文学映画とも言える傑作です。

荒ぶる魂たち

公開年	制作国	上映時間
2002年	日本	112分

映画紹介：
三池崇史監督が放った衝撃作『荒ぶる魂たち』。主演・哀川翔が演じるのは、冷酷なヒットマンとして裏社会を生き抜く男。愛と暴力、そして生存本能が絡み合う濃密な物語は、三池らしいエッジの効いた演出とともに観客を圧倒します。

物語は暗殺任務を軸に進みながらも、やがて主人公が抱える孤独と矛盾が露わになります。人を殺しながら生きるしかない宿命と、心の奥底に潜む人間性のせめぎ合い。その不協和音が作品全体に張り詰めた緊張感を生み出しています。

銃撃戦や拷問のシーンは容赦がなく、暴力の冷たさを徹底して突きつけますが、その一方で静謐な瞬間や哀愁を漂わせる場面が強い印象を残します。生々しい暴力と繊細な人間描写のコントラストが、本作を唯一無二のヤクザ映画へと押し上げました。

「暴力の中にこそ生きる実感がある」──そんな極限の世界を体験できる一作です。

無頼

公開年	制作国	上映時間
2020年	日本	145分

映画紹介：
井筒和幸監督が9年ぶりに放った渾身の力作『無頼』。戦後から高度経済成長期にかけて、底辺から這い上がり裏社会を生き抜くアウトローたちの群像劇を描き出した社会派ヤクザ映画です。時代のうねりと共に生きる人々のリアルが、濃厚かつ重厚に描かれています。

主人公・井藤（松本利夫）は、貧しさから逃れるように裏稼業に足を踏み入れ、やがて抗争と裏切りの中でのし上がっていきます。だが同時に、成長する日本社会と切り捨てられる人々の矛盾を背負わされることに。ヤクザ映画でありながら、日本現代史を映し出す一級の人間ドラマとなっています。

銃撃や暴力描写もありますが、それ以上に観客を打つのは人間の弱さと逞しさのリアル。井筒監督らしい骨太な社会批評が全編に宿り、スクリーンから重みのあるメッセージが突きつけられます。

2020年代に登場した、正統派ヤクザ映画の新たな金字塔。古典へのリスペクトを込めつつも、現代に語り継がれるべき作品です。

昭和残侠伝

公開年	制作国	上映時間
1965年	日本	95分

映画紹介：
高倉健主演の『昭和残侠伝』は、任侠映画の象徴的存在として長く語り継がれる名作です。ここには実録路線が生まれる前の、義理と人情、そして散り際の美学が凝縮されています。哀愁漂う高倉健の立ち姿と、時代の空気感を映し取った世界観は、日本人の心に深く刻まれました。

物語は、裏切りと抗争に巻き込まれながらも己の仁義を貫こうとする男の姿を描きます。友情と裏切り、義理と情のせめぎ合いは、血なまぐさい抗争の中にあっても人間の温かさを強調しています。

ラストに流れる「唐獅子牡丹」とともに、死をも恐れない覚悟と散り際の美学が際立ち、観客の胸を打ちます。実録ヤクザ映画とは異なる、任侠映画ならではの格調高さがここにあります。

義理と人情を重んじる“古き良きヤクザ像”を体感できる一本。現代の荒々しい実録作品と見比べると、その対比もまた興味深いでしょう。

暴力街

公開年	制作国	上映時間
1974年	日本	98分

映画紹介：
深作欣二監督による『暴力街』は、タイトル通り暴力が支配する無法地帯を真正面から描いたアクション色の強い実録ヤクザ映画です。菅原文太をはじめとする名優たちが織りなす緊張感は、観客を一気に抗争の渦へと引き込みます。

舞台となるのは、裏社会の思惑と金が交錯する街。そこで繰り広げられるのは、権力争いと血で血を洗う抗争劇。手持ちカメラによるドキュメンタリー風の演出とスピーディな展開が、本作を一層生々しくしています。

暴力描写は容赦なく、観る者に“社会の裏側を覗き見ているような恐怖”を与えます。血の臭いと叫び声が画面いっぱいに充満し、ヤクザ映画の持つ荒々しい迫力を存分に堪能できます。

任侠美談を排し、ただ暴力と欲望が支配する世界を描いた本作は、実録路線の中でも特に異彩を放つ一作です。

ビー・バップ・ハイスクール

公開年	制作国	上映時間
1985年	日本	95分

映画紹介：
不良映画の金字塔『ビー・バップ・ハイスクール』は、ツッパリ文化全盛の80年代を象徴する作品。清水宏次朗と仲村トオルが演じるトオルとヒロシのコンビが、喧嘩に友情、恋愛にと大暴れする青春映画です。単なる学園モノにとどまらず、ヤクザや暴走族との抗争にまで発展するスケール感が大きな魅力です。

ストーリーは破天荒ですが、その根底には不良たちの友情と義理人情がしっかり描かれています。笑えるやり取りから壮絶な乱闘まで、緩急のある展開は観客を飽きさせません。青春映画でありながら、暴力描写は意外なほど生々しく、当時の若者文化をリアルに伝えています。

シリーズ化され大ヒットした理由は、アクションとコメディの絶妙なバランス。ただの不良映画を超え、80年代を象徴するポップカルチャーとして位置づけられる一本です。

ヤクザ映画の中に直接入れるには異色ですが、「若者と裏社会」の交差を描いた重要作と言えるでしょう。

やくざの墓場 くちなしの花

公開年	制作国	上映時間
1976年	日本	96分

映画紹介：
深作欣二監督による『やくざの墓場 くちなしの花』は、実在の刑事・木村好夫をモデルにした異色の実録映画。警察とヤクザの癒着や腐敗を真正面から描き、善悪の境界をあいまいにした問題作として知られています。主人公を演じる渡哲也の鬼気迫る演技が、観客を圧倒します。

物語は、法を守るべき刑事が裏社会と関わり、暴力と欲望に取り込まれていく姿を描きます。正義の仮面をかぶった権力の腐敗というテーマは、当時の観客に強烈なインパクトを与え、現在観てもなお衝撃的です。

暴力や拷問のシーンは容赦なく、実録ヤクザ映画の枠を超えた凄惨さを伴っています。その一方で、主人公の孤独や虚しさも描かれ、ただの暴力映画ではなく人間の業を凝視する社会派ドラマとして成立しています。

「正義」と「悪」の境界が崩れ落ちる瞬間を目撃できる、実録路線の中でも異色の傑作です。

新宿乱れ街 いくまで待って

公開年	制作国	上映時間
1977年	日本	101分

映画紹介：
『新宿乱れ街 いくまで待って』は、70年代後半の新宿というカオスを舞台に、不良とヤクザのはざまで生きる若者たちの青春と破滅を描いた作品です。生きる術を求めて街をさまよう若者たちの姿は、時代の熱気と同時に社会の歪みを映し出しています。

暴走族やチンピラ、そしてヤクザが入り乱れる街の中で、主人公は仲間との絆を信じながらも裏切りや暴力に直面していきます。自由を求める衝動と、抗えない暴力の現実が交差するドラマは、青春映画でありながら強烈な痛みを帯びています。

手持ちカメラを駆使した臨場感ある映像と、当時の新宿の雑多な空気感がそのままパッケージされており、ドキュメント性の高い青春実録劇として今なお鮮烈です。

哀愁と暴力が交錯する、70年代青春ヤクザ映画の異色作として語り継がれる一本です。

悲しきヒットマン

公開年	制作国	上映時間
1989年	日本	108分

映画紹介：
村川透監督が手がけた『悲しきヒットマン』は、組織に使い捨てられる殺し屋の宿命を描いた人間ドラマです。主演の渡瀬恒彦が冷酷かつ哀愁漂うヒットマンを熱演し、アクションだけでなく切なさを伴った物語が観客の心を掴みます。

主人公は、金と引き換えに人を殺すという生業を続けながらも、家族との再生や愛をどこかで求めてしまう矛盾を抱えています。その人間臭さが、単なるバイオレンス作品ではない深みを与えています。

銃撃戦や抗争シーンは緊迫感に満ちていますが、最も印象に残るのは主人公の孤独な背中。非情な世界の中で人間性を失わないことの難しさを痛感させられる一作です。

「生き延びる」ことと「人間らしくあること」の狭間で揺れる哀しいヒットマン像は、他のヤクザ映画とは一線を画す魅力を放っています。

アウトレイジ

公開年	制作国	上映時間
2010年	日本	109分

映画紹介：
北野武監督が再び暴力の美学に挑んだ『アウトレイジ』は、徹底的に仁義を排除した冷酷な抗争劇です。巨大組織・山王会の内部抗争を描きながら、権力構造の冷たさと人間の欲望の果てを見せつけます。派手なアクションではなく、淡々とした暴力の積み重ねが恐怖を呼び起こすスタイルが特徴です。

主人公・大友（ビートたけし）は組の古参幹部。抗争の駒として利用される中で、仁義なき裏切りの連鎖に巻き込まれていきます。次々と仕掛けられる罠と報復は、観客に「誰も信用できない」という緊張感を植え付けます。

銃撃や拷問などの暴力描写は容赦なく、日常の延長に死が転がっているリアルさが強烈な印象を残します。静けさの中に不気味な空気を張り詰めさせる北野武の演出は、暴力の恐ろしさをより際立たせています。

「全員悪人」というコピー通り、正義も義理も存在しない世界。その虚無感こそが本作の衝撃です。

アウトレイジ ビヨンド

公開年	制作国	上映時間
2012年	日本	112分

映画紹介：
北野武監督による『アウトレイジ』シリーズ第2弾。前作で壮絶な抗争を生き延びた大友（ビートたけし）が、再び裏社会の権力闘争へと引きずり込まれていきます。警察までもが一枚岩となって裏社会を利用する構図が鮮明に描かれ、暴力の連鎖はさらに複雑で大規模に拡大しました。

今回は巨大組織・山王会と関西ヤクザの勢力図が交差し、そこに警察が介入することで事態は一層混沌とします。誰が味方で誰が敵か分からない不安定な関係の中、大友の存在感と狂気が際立ちます。

銃撃戦や拷問などの暴力描写は健在ながら、より戦略的な駆け引きが中心となり、裏社会のリアルな権力劇を浮き彫りにしました。暴力の恐怖だけでなく、権力構造そのものの恐ろしさを描いた点が本作の特徴です。

抗争は組織を越え、警察をも巻き込んだ大規模なものへ──スケールアップした冷酷な物語に圧倒されます。

アウトレイジ 最終章

公開年	制作国	上映時間
2017年	日本	104分

映画紹介：
『アウトレイジ』三部作の完結編となる『最終章』。韓国に渡った大友（ビートたけし）が、再び日本の裏社会に引き戻され、巨大組織間の抗争に身を投じる姿を描きます。これまで積み上げられてきた因縁が収束し、冷酷な暴力の連鎖がついに終焉を迎えます。

前作までの複雑な権力闘争に加え、日韓をまたぐスケール感と、老境に差しかかった大友の生き様が物語に重厚な陰影を与えています。疲弊しながらも生き延びるために銃を取る姿は、シリーズを通じて描かれてきた虚無を凝縮したかのようです。

銃撃戦や報復の描写は健在ながら、最も胸を打つのは「裏社会で生きることの虚しさ」そのもの。派手さではなく、淡々と積み重ねられた暴力の果てに訪れる結末は、観る者に深い余韻を残します。

「全員悪人」のコピーで始まったシリーズが辿り着いた、必然のラスト。北野武の美学が貫かれた壮絶な幕引きです。

首領（ドン）

公開年	制作国	上映時間
2023年	日本	121分

映画紹介：
令和の時代に誕生した新たな本格ヤクザ映画が『首領（ドン）』。古き良き任侠映画の伝統を受け継ぎつつ、現代社会における裏社会の在り方を鋭く切り取った作品です。組織の頂点を目指す男たちの仁義なき攻防が描かれ、往年の名作群に匹敵する熱量を感じさせます。

ストーリーは、勢力拡大を狙う新興組織と、古参の大組織との対立を軸に展開。権力・忠義・裏切りが絡み合う人間模様は、現代でも普遍的なテーマとして観客に迫ってきます。従来の美化された任侠像ではなく、リアルで冷酷な権力闘争を体感できます。

銃撃や殴打のシーンは生々しく、緊張感は最後まで途切れません。だが同時に、現代社会に適応しながら変貌するヤクザ像を描く点が、過去の作品との差別化となっています。

「今だからこそ撮れるヤクザ映画」として、ジャンルの伝統と革新を体現する必見の一本です。

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ヤクザ映画は単なる暴力や抗争の物語ではありません。そこには義理と人情、権力と裏切りといった人間社会の縮図が凝縮されています。

時代によって任侠の美学は変わり、実録路線や社会派ドラマへと進化してきました。しかし一貫して描かれてきたのは、人間がどう生き、どう散るのかという根源的なテーマです。暴力の冷酷さの中に、人間の哀しさや誇りが刻み込まれています。

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