社会派ホラー映画おすすめ10選｜現実の闇が一番怖い

幽霊も怪物も出てこないのに、背筋が凍る──そんな“現実の恐怖”を描くジャンルがあります。

人種差別、格差、監視、DV、ネット孤立…。スクリーンに映し出されるのは、フィクションの皮をかぶった“今この社会”そのもの。そこには血よりも冷たい、人間の無関心や偽善が潜んでいます。

この記事では、エンタメとしての恐怖と、社会が抱える闇を融合させた「社会派ホラー映画」10選を厳選。
ただ怖いだけじゃない、観終わったあとに考えさせられる傑作たちを紹介します。

この恐怖は、スクリーンの向こうじゃなく、あなたのすぐ隣にある。

社会派ホラー映画おすすめ10選｜現実の闇が一番怖い

タイトル	テーマ	怖さ
ゲット・アウト	人種差別・偽善
アス	階級・格差
プラットフォーム	格差社会・人間性
獣の棲む家	難民・罪悪感
透明人間	DV・支配
キャンディマン	都市再開発・人種
ゼイリブ	消費社会・支配構造
哭声／コクソン	他者恐怖・集団心理
回路	孤独・ネット社会
パージ	暴力・貧困・制度

ゲット・アウト

公開年	制作国	上映時間
2017年	アメリカ	104分

映画紹介：
白人社会の中に潜む“リベラルな差別”を暴き出した衝撃作、『ゲット・アウト』。コメディアン出身のジョーダン・ピール監督が放つこの作品は、ホラーの形式を借りながら、アメリカ社会の構造的差別と支配の恐怖を見事に描き出した社会派スリラーです。

黒人青年クリスは、恋人ローズの実家に招かれるが、そこはどこか不自然な空気。親切すぎる白人たち、違和感だらけの黒人使用人──そして、笑顔の裏に潜む「何か」が、少しずつ彼を追い詰めていきます。物語が進むにつれ明らかになる真実は、「善意」を装った支配という形の恐怖そのものです。

単なる“人種ホラー”ではなく、観客自身の心の奥に潜む偏見を暴く鏡として機能するのが本作の真骨頂。ピール監督の緻密な脚本と、主演ダニエル・カルーヤの繊細な演技が、じわじわと喉を締めつけます。

観終わったあと、「怖い」の意味が変わる。ホラーの枠を超えて社会に切り込んだ、現代ホラーの金字塔です。

アス

公開年	制作国	上映時間
2019年	アメリカ	116分

映画紹介：
ジョーダン・ピール監督が『ゲット・アウト』に続き放った、社会風刺ホラーの第2弾。『アス』は、誰の中にも存在する“もう一人の自分”というテーマを軸に、階級社会の不平等と排除された者たちの怒りをホラーの形で描いた問題作です。

物語は、ある夏の日に海辺の別荘を訪れた一家が、自分たちそっくりの「影」たちに襲われるところから始まります。彼ら“テザーズ”は地下に閉じ込められ、地上の人々を模倣する存在。社会の裏側に押し込められた“影”の人々が反乱を起こすという構図が、観る者に強烈な比喩として突き刺さります。

スリラーとしての完成度も高く、音楽・演出・構成のすべてが不穏。特にラストのどんでん返しは、「私たちは誰なのか？」という根源的な問いを観客に突きつけます。

“Us（私たち）”とは誰を指すのか？　このタイトルに込められたメッセージを理解したとき、あなたはもう笑えなくなっているはず。

プラットフォーム

公開年	制作国	上映時間
2019年	スペイン	94分

映画紹介：
社会の縮図をたった一つの「縦穴監獄」で描いた異色ホラー、『プラットフォーム』。その設定のシンプルさとメッセージの鋭さは、観た者に強烈な印象を残します。上層階から下層階へと食べ物が運ばれる構造──それはまさに、現代の格差社会そのものです。

主人公ゴレンが目を覚ますと、そこは縦に何百階も続く監獄。中央の穴を通じて、一日一度だけ「食卓」が上から降りてくる。上階の者たちは豪華な料理を食い荒らし、下層の者には残飯すら届かない。飢えと狂気、暴力が支配するこの空間は、人間の本性が剥き出しになる“社会実験”の場です。

「もし全員が少しだけ我慢すれば、全員が生きられる」──理想はわかっていても、実行できないのが人間。作品全体を通して、観客に「自分ならどうする？」と問い続けます。

哲学的でグロテスク、そして痛烈。『プラットフォーム』は、人間の欲とシステムの残酷さを可視化した“格差ホラー”の決定版です。

獣の棲む家（His House）

公開年	制作国	上映時間
2020年	イギリス	93分

映画紹介：
難民問題とトラウマを題材に、現代社会の“見えない壁”をホラーとして描いたのが『獣の棲む家（His House）』です。戦火を逃れた夫婦が新天地で暮らし始めたその家には、彼らが過去に背負った「罪」と「亡霊」が潜んでいました。

彼らが手にしたのは安全な生活ではなく、社会の冷たい監視と心の闇。役所の監視員からの圧力、生活制限、そして深夜に響く謎の物音──。そのすべてが、異国の地で“受け入れられない”苦痛を象徴しています。

ホラー描写は一流。暗闇から現れる影、家に染みついた罪悪感の具現化、そして“亡霊”の正体が明かされる瞬間──観る者の胸を締めつけます。恐怖と同時に、「生き延びること」の意味を問う社会派ドラマでもあります。

単なる心霊映画ではなく、難民としての苦悩をリアルに描いた傑作。逃げても逃げられないのは、過去と社会、そして自分自身──そう感じさせる深みのある一本です。

透明人間

公開年	制作国	上映時間
2020年	アメリカ	124分

映画紹介：
見えない恐怖と、誰にも信じてもらえない絶望を描いた『透明人間』。古典的モンスターを現代的に再解釈し、DV・モラハラ・ガスライティング（心理的支配）という社会問題に真正面から切り込んだサイコスリラーです。

長年の虐待から逃げ出したセシリアは、支配的な恋人が自殺したという知らせを受けます。だが、その後も彼の気配が消えない。物が勝手に動く、見えない誰かに触れられる──。観客は彼女とともに、「本当に誰もいないのか」という不安に引きずり込まれます。

本作の恐怖は、単に“見えない敵”ではありません。誰も信じてくれない環境、女性の声が軽視される社会構造──そのすべてが“見えない暴力”として描かれています。緊迫感と演出の巧みさは圧巻で、エリザベス・モスの演技は鬼気迫るものがあります。

ホラーを装いながら、現代社会における被害者の孤立と恐怖をえぐり出した傑作。真に怖いのは、姿なき人間の狂気です。

キャンディマン

公開年	制作国	上映時間
2021年	アメリカ	91分

映画紹介：
「鏡に5回“キャンディマン”と唱えると、彼が現れる」──1990年代の伝説的ホラーを、ジョーダン・ピールが製作として現代に蘇らせたリメイク版『キャンディマン』。本作は単なる続編ではなく、都市開発・人種差別・暴力の連鎖を鋭く描いた社会派ホラーとして再構築されています。

舞台は再開発が進むシカゴのカブリーニ＝グリーン地区。芸術家の青年アンソニーは、黒人差別と都市伝説を題材にした作品を作ろうと調査を始める。しかし彼が“キャンディマン”を呼び出してしまったことで、再び惨劇の連鎖が始まるのです。やがて明らかになるのは、都市の美化の裏で切り捨てられた人々の怨念でした。

ホラーとしての恐怖はもちろん、暴力と記憶が形を変えて受け継がれていく社会構造を描く脚本が圧巻。黒人差別やジェントリフィケーション（高級住宅化）が、物語の骨格に組み込まれています。

「キャンディマン」はもはや怪物ではなく、抑圧された人々の声なき叫び。過去と現在をつなぐ社会的寓話として、恐怖のその先に深い余韻を残します。

ゼイリブ

公開年	制作国	上映時間
1988年	アメリカ	94分

映画紹介：
サングラスをかけると、世界の真実が見える──。ジョン・カーペンター監督によるカルト的名作『ゼイリブ』は、1980年代アメリカの消費社会を痛烈に風刺した社会派SFホラー。派手なアクションの裏に、見えない支配と洗脳の構造が潜んでいます。

主人公ナダは、偶然手に入れたサングラスを通して驚愕の光景を目にします。街の看板には「OBEY（服従せよ）」、雑誌には「CONSUME（消費せよ）」、そして人間の中に人間に化けた支配者＝異星人が紛れ込んでいたのです。

この作品が描くのは、単なるエイリアン侵略ではなく、権力・メディア・資本主義による思想支配。それは今の時代にも通じる普遍的なテーマであり、観る者に「自分は何を信じ、何に操られているのか」を問いかけます。

低予算ながらも異様な説得力を放つ演出、そして“6分間の格闘シーン”は映画史に残る伝説。『ゼイリブ』は、ホラーと風刺の融合点に立つ永遠の社会派クラシックです。

哭声／コクソン

公開年	制作国	上映時間
2016年	韓国	156分

映画紹介：
「悪魔は誰だ？」──韓国映画『哭声／コクソン』は、ホラーとミステリー、宗教ドラマが交錯する圧倒的な社会派ホラー。小さな村で連続殺人が起き、外部から来た日本人男性に疑いの目が向けられる。そこに描かれるのは、他者への恐怖と集団ヒステリーが生む“現代の魔女狩り”です。

物語の中心にいるのは、頼りない警官ジョング。娘の身に異変が起こったことで、彼の信念は崩壊していきます。科学も宗教も通じない混沌の中で、村人たちは噂と恐怖に支配され、理性が崩壊していく過程がリアルに描かれます。

ナ・ホンジン監督の演出は壮絶。静寂と狂気が交互に押し寄せ、観客は善悪の区別がつかなくなる。終盤の祈祷シーンは、まさに“信じること”そのものを試されるような緊張感です。

『哭声』は単なるオカルトではなく、社会が生み出す差別と集団心理の恐怖を描いた寓話。恐怖と混乱の果てに残るのは、信仰でも理性でもなく、「疑い」という名の地獄です。

回路（Kairo）

公開年	制作国	上映時間
2001年	日本	119分

映画紹介：
黒沢清監督によるサイバー時代の恐怖、『回路（Kairo）』は、ネットの普及が始まった2000年代初頭に“孤独と繋がり”の矛盾を描き出した異色の社会派ホラーです。幽霊映画でありながら、テーマは「人間がネットで孤立していく未来」。今だからこそ、その先見性が光ります。

ある日、社員の一人が自殺したことをきっかけに、仲間たちの間で奇妙な現象が起こり始めます。パソコン画面に映る見知らぬ部屋、そして「幽霊はこの世に溢れ出している」というメッセージ。やがて人々は、誰とも繋がらず、誰もいない世界に閉じ込められていく──。

本作は幽霊を「孤独の象徴」として扱い、テクノロジーが人を繋ぐはずなのに、逆に断絶を生むという逆説を描いています。静かな映像と不気味な間、そして心を蝕むような無音の恐怖が、じわじわと観客を侵食します。

スマホやSNS時代の今こそ観るべき一本。『回路』は、ネット社会における“孤立という名のホラー”を20年以上前に警告していた予言的傑作です。

パージ

公開年	制作国	上映時間
2013年	アメリカ	85分

映画紹介：
「年に一晩だけ、全ての犯罪が合法になる」──この設定だけで背筋が凍る『パージ』は、アメリカ社会が抱える暴力と貧困の構造をむき出しにした社会派ホラー。単なるスリラーを超えて、国家と個人の倫理を問う寓話として高い評価を受けました。

舞台は近未来のアメリカ。政府は犯罪抑制のために「パージ制度」を導入し、年に一度だけ殺人を含むあらゆる犯罪が許される夜を設けます。裕福な家庭は防犯システムで安全を確保する一方、貧困層は襲撃の対象に──。社会的弱者が“合法的に処分される”という構図は、現実の格差社会を痛烈に風刺しています。

閉ざされた家の中で、家族が生き延びるためにどこまで残酷になれるのか。恐怖の中で浮かび上がるのは、人間の善悪を分ける境界線の曖昧さです。息をつかせぬサスペンスの裏で、「正義」と「生存本能」の衝突が描かれます。

暴力を制度として正当化する社会の狂気を描いた『パージ』。シリーズ化されるほど人気を博した理由は、フィクションでありながら、あまりに現実的だからこそです。

“社会の闇をえぐるホラー”を観るなら、U-NEXTで

人種・格差・監視・DV・ネット孤立など、現実の問題を映し出す“社会派ホラー”は、観終わったあとに深く考えさせてくれる名作が揃っています。U-NEXTなら、話題作からカルトまで幅広くラインナップ。

血の気が引く恐怖だけでなく、構造的な暴力や無関心、同調圧力といった“見えない恐怖”にも触れられるのが魅力。エンタメとして楽しみつつ、社会の今を読み解く視点も手に入ります。

さらにU-NEXTは見放題が充実しているうえ、毎月1,200円分のU-NEXTポイントが付与されるので、最新レンタルや有料作品の視聴にも使えます。4アカウントまでのファミリーアカウントやマルチデバイス対応で、どこでも鑑賞OK。

初回登録は31日間の無料トライアルに対応。
単なる“驚かせ系”ではない、考えさせられるホラー体験を、この機会にU-NEXTでじっくり味わってください。

▶ U-NEXTのおすすめポイント

＼ 初回31日間は無料登録可能！ ／

※解約はいつでも可能です

“現実の闇”を映すホラーで、心の奥を覗いてみよう。

幽霊でも怪物でもなく、私たちが生きる「社会」そのものが恐怖の源になる──それが社会派ホラーの魅力です。

差別、貧困、暴力、孤独。見えない恐怖を描くことで、人間の弱さや、社会の歪みが鮮明に浮かび上がります。恐怖と同時に、どこか胸が痛くなるようなリアリティが、このジャンルをただのエンタメでは終わらせません。

もしあなたが「怖いだけじゃなく、考えさせられる映画が観たい」と思うなら、社会派ホラーはまさにその答えです。恐怖の向こうに見える“現実”が、あなたの中の何かをきっと揺さぶってくれるはずです。