【全20種類】ホラーのサブジャンル完全ガイド｜特徴・代表作紹介

ホラー映画とひと口に言っても、その“怖さの質”は千差万別です。血みどろのスプラッターもあれば、静かに心をえぐる心理ホラー、宇宙規模の恐怖を描くコズミックホラーまで──。

こうした細分化されたジャンル（サブジャンル）を知ることは、自分にぴったりの恐怖体験を見つけるための最短ルートでもあります。

今回は「ホラーのサブジャンル」全20種類を徹底ガイド。
特徴やよくある展開、代表作、初心者向け度を整理して、あなたが求める“ちょうどいい怖さ”を探せるようにしました。

ホラーの世界は広大で奥深い──その入り口を、ここから覗いてみましょう。

ホラーのサブジャンル一覧（全20種類）

ジャンル	特徴	代表作品
サイコホラー	狂気・精神異常	『サイコ』『ブラック・スワン』
ミステリーホラー	謎解き・真相解明	『アザーズ』『ゴーン・ガール』
サスペンスホラー	緊張感・スリル	『ミザリー』『ゲット・アウト』
オカルトホラー	悪魔・呪い・宗教	『エクソシスト』『ヘレディタリー』
ジャパニーズホラー	怪談・心霊	『リング』『呪怨』
新感覚ホラー	実験的・現代的表現	『ミッドサマー』『NOPE／ノープ』
ゾンビホラー	感染・群衆恐怖	『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『新感染』
モンスターホラー	未知の生物	『ザ・フライ』『クローバーフィールド』
アニマルホラー	動物パニック	『ジョーズ』『グリズリー』
SFホラー	科学・宇宙・実験	『エイリアン』『イベント・ホライゾン』
スラッシャーホラー	殺人鬼・追跡	『ハロウィン』『13日の金曜日』
スプラッターホラー	流血・ゴア描写	『死霊のはらわた』『ホステル』
アクションホラー	戦闘・銃撃＋恐怖	『ドーン・オブ・ザ・デッド』『バイオハザード』
ファウンド・フッテージ／POV	モキュメンタリー映像	『ブレア・ウィッチ』『REC』
シチュエーションホラー	密室・孤立・極限	『CUBE』『FALL／フォール』
オムニバスホラー	短編連作	『クリープショー』『V/H/S』
クロスオーバーホラー	ジャンル融合型	『フレディVSジェイソン』『AVP』
村ホラー／田舎ホラー	因習・共同体の狂気	『ウィッカーマン』『八つ墓村』
青春学園ホラー	学校・学生を舞台	『スクリーム』『ファイナル・デスティネーション』
コメディホラー	笑い＋恐怖	『ショーン・オブ・ザ・デッド』『タッカーとデイル』

サイコホラー

人間の心の闇そのものを恐怖の源泉にするジャンル。怪物や幽霊ではなく、狂気に陥った人間の異常な心理や行動が観客を震え上がらせます。派手な演出は少なくても、精神的に追い詰められる恐怖は圧倒的。観終わった後も頭から離れない“後を引く怖さ”が特徴です。

代表作の『サイコ』（1960）は、アルフレッド・ヒッチコックが切り拓いた金字塔。シャワーシーンの緊張感は、半世紀以上経った今も観客の記憶に焼き付いています。怪物は出ないのに、これほど恐ろしい──サイコホラーの真髄を体感できる1本です。

ミステリーホラー

謎解きの要素と恐怖を組み合わせたジャンル。「真相がわかるまでの不安」と「解き明かされた時の衝撃」が二重に襲いかかります。探偵役や主人公と同じ視点で“謎を追う”臨場感があり、サスペンス好きにも人気です。

代表作『アザーズ』（2001）は、屋敷に潜む秘密と母子の物語を絡めた傑作。ミステリーの緻密な構成とホラーならではの不気味な演出が融合し、ラストのどんでん返しで観客を震撼させます。

サスペンスホラー

恐怖と同時に“張り詰めた緊張感”を味わえるジャンル。殺人や陰謀の影にさらされる人物を描き、観客も一緒に追い詰められるのが魅力です。恐怖シーンよりも、何が起きるかわからない状況そのものが怖さを生みます。

代表作『ゲット・アウト』（2017）は、人種問題を題材にした社会派サスペンスホラー。平和な家庭訪問が次第に異常性を露わにし、逃げ場のない緊迫感が観る者を釘付けにします。

オカルトホラー

悪魔、呪い、宗教的禁忌を題材にしたジャンル。見えない存在や信仰の力が恐怖を増幅し、精神的な不安を突きつけてきます。神父や儀式が登場することが多く、人間の理解を超えた恐ろしさが魅力です。

代表作『エクソシスト』（1973）は、悪魔に憑依された少女と神父の戦いを描く不朽の名作。衝撃的な映像と宗教的テーマが組み合わさり、今も“史上最恐”と語り継がれる一本です。

ジャパニーズホラー

日本特有の“間”や“余韻”で恐怖を紡ぐジャンル。血の描写は少なめでも、日常に潜む違和感や不吉な気配が背筋を凍らせます。海外ホラーにはない独特の湿度感や静けさが特徴です。

代表作『リング』（1998）は、ビデオテープを通じて広がる呪いを描き、世界的なJホラーブームを巻き起こしました。静かな演出と衝撃の“井戸のシーン”は、日本ホラーを代表する恐怖体験です。

新感覚ホラー

従来のホラー表現にとらわれない、実験的で斬新なスタイル。視覚的な美しさや社会的テーマを取り込み、ジャンルの枠を押し広げています。観客に「これまでのホラーとは違う」と感じさせるインパクトが魅力です。

代表作『ミッドサマー』（2019）は、真夏の北欧の村を舞台にした異色作。太陽の下で繰り広げられる祝祭と狂気のコントラストが強烈で、ホラーの新時代を告げる作品となりました。

ゾンビホラー

死者が甦り、人間社会を襲う恐怖を描く定番ジャンル。感染や群衆の暴走を通じて、人間の本能や社会秩序の崩壊を浮き彫りにします。サバイバル要素が強く、絶望的な状況での人間ドラマも見どころです。

代表作『新感染 ファイナル・エクスプレス』（2016）は、韓国発の高速鉄道を舞台にした怒涛のパニックホラー。閉ざされた車両で広がる感染と人間模様が、涙と恐怖を同時に呼び起こします。

モンスターホラー

未知の怪物や異形の存在と遭遇する原始的な恐怖。人間が太刀打ちできない強大な力に直面し、絶望感やスリルを味わえます。怪物の“出し惜しみ”や造形のセンスが恐怖を大きく左右します。

代表作『ザ・フライ』（1986）は、科学実験の失敗から人間が怪物へと変貌していく物語。肉体の崩壊と悲劇的なドラマが絡み合い、観客に強烈な衝撃を与えました。

アニマルホラー

野生動物や自然界の生物が人間に牙をむくジャンル。サメや熊、昆虫など、現実に存在する生き物だからこそのリアルな恐怖があります。自然の猛威に人間が無力であることを思い知らされるのも特徴です。

代表作『ジョーズ』（1975）は、巨大ホオジロザメと人間の死闘を描いたスティーヴン・スピルバーグの代表作。海水浴場という身近な舞台設定が、世界中の人々に“海への恐怖”を植え付けました。

SFホラー

科学や宇宙、未知のテクノロジーを題材にしたジャンル。未来的な設定や実験的要素を背景に、人間の傲慢さや未知との遭遇が恐怖へとつながります。サイエンスフィクションとホラーの融合は、スケールの大きな恐怖を生み出します。

代表作『エイリアン』（1979）は、宇宙船内で一匹の異星生物に追い詰められるサバイバルホラー。閉鎖空間の緊迫感とクリーチャーデザインの完成度が、映画史に残る名作として語り継がれています。

スラッシャーホラー

仮面や武器を手にした殺人鬼が若者たちを次々に襲う定番スタイル。単純明快なプロットながら、緊張感と恐怖が直球で伝わります。“誰が最後に生き残るのか”というルール性も、観客を引き込む魅力のひとつです。

代表作『ハロウィン』（1978）は、ブギーマン＝マイケル・マイヤーズの存在感が際立つ金字塔。音楽と静寂を巧みに操り、シンプルながら圧倒的な恐怖を生み出しました。

スプラッターホラー

血しぶきや肉体破壊など、グロテスクな描写を前面に押し出すジャンル。特殊メイクやSFXの限界に挑戦することも多く、耐性がないと直視できないこともしばしば。恐怖と同時にショックやカタルシスを与える独特の魅力があります。

代表作『ホステル』（2005）は、拷問描写の極限を突き詰めたトラウマ級の一本。観客の想像力をえぐり出し、“見る勇気”を試す作品として有名です。

アクションホラー

戦闘や銃撃戦の迫力とホラー要素を融合させたジャンル。緊張感とスピード感があり、単なる恐怖だけでなく爽快感も得られます。ゾンビやモンスターとのバトルを描く作品が多く、エンタメ性の高さが特徴です。

代表作『バイオハザード』（2002）は、ゲーム原作を大胆にアレンジしたアクションホラーの代表格。ゾンビとの戦闘と企業陰謀が絡み、アクションと恐怖を同時に楽しめます。

ファウンド・フッテージ／POV

“発見された映像”や主観カメラで展開するジャンル。ドキュメンタリー風のリアリティが恐怖を増幅させ、観客を“その場にいる”ような感覚に陥らせます。画質の粗さや手ブレさえも恐怖演出に転化されるのが特徴です。

代表作『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』（1999）は、低予算ながら口コミで社会現象を巻き起こした名作。ラストに至るまで姿を見せない恐怖が観客の想像力を刺激し、POVスタイルの礎を築きました。

シチュエーションホラー

密室や孤立状態など、限定された状況に閉じ込められる恐怖。逃げ場のない緊張感と、極限状態での人間の心理が描かれるのが特徴です。観客自身も同じシチュエーションに放り込まれたかのような没入感があります。

代表作『CUBE』（1997）は、謎の立方体の中に閉じ込められた人々が脱出を試みる密室ホラーの傑作。冷徹な空間と人間同士の疑心暗鬼が、シンプルながら強烈な恐怖を生み出しました。

オムニバスホラー

複数の短編エピソードをひとつにまとめた形式。一本ごとに異なるテーマや演出が楽しめ、短時間でテンポよく恐怖を味わえます。バラエティに富んだ作品構成は、ホラーファンの“お得感”を刺激します。

代表作『クリープショー』（1982）は、ホラー漫画を実写化したオムニバス映画。ブラックユーモアと恐怖が交錯する異色作で、短編集ならではの濃密な恐怖体験が楽しめます。

クロスオーバーホラー

異なる作品やジャンルを融合させた豪華対決型ホラー。アイコニックなキャラクター同士の衝突や、ジャンルを横断するストーリーが特徴。ファンサービス色が強く、エンタメ性の高さで観客を熱狂させます。

代表作『フレディVSジェイソン』（2003）は、二大ホラーアイコンの夢の対決を描いたクロスオーバー作品。恐怖と笑い、ファンへのサービス精神が詰まった一本です。

村ホラー／田舎ホラー

因習や閉鎖的な共同体が恐怖を生むジャンル。都市から隔絶された村や田舎が舞台となり、外の常識が通じない不気味さが観客を震え上がらせます。人間社会そのものの狂気を突きつけてくるのが最大の恐怖です。

代表作『ウィッカーマン』（1973）は、スコットランドの孤島を舞台にした伝説的フォークホラー。美しい風景の裏に潜む狂気の儀式は、観客に深い戦慄を残します。

青春学園ホラー

学生や学校を舞台にした青春と恐怖の融合ジャンル。友情や恋愛といった青春要素が恐怖に引き裂かれる展開は、残酷さと切なさが共存します。若者の無防備さが、恐怖を一層際立たせます。

代表作『スクリーム』（1996）は、学園生活を舞台に仮面の殺人鬼が襲いかかるメタ・ホラー。スラッシャーの定番を踏襲しつつ、ジャンルを俯瞰する知的な楽しみも提供します。

コメディホラー

笑いと恐怖を掛け合わせたエンタメ性の高いジャンル。ショッキングな描写を逆手に取って笑いに変えることで、怖さが苦手な人でも楽しめます。恐怖と笑いのギャップがクセになる作品が多いのも特徴です。

代表作『ショーン・オブ・ザ・デッド』（2004）は、ゾンビパンデミックを舞台にしながら笑いを誘う傑作。恐怖とユーモアを絶妙にミックスし、ジャンルを超えた人気を博しました。

ホラーの多彩な“怖さ”を知ることで広がる世界。

ホラー映画は「怖い」という一言では片づけられないほど、ジャンルごとにまったく違う表情を見せてくれます。

心理をえぐるもの、血しぶきが飛び散るもの、怪物やゾンビが暴れまわるもの──それぞれのサブジャンルには、独自の魅力と恐怖のポイントが存在します。だからこそ、自分に合ったジャンルを知ることは、ホラーの楽しみ方をぐっと広げてくれるのです。

もしあなたが「どんなホラーから観ればいいのかわからない」と迷っているなら、今回紹介した20種類のサブジャンルが必ずヒントになるはず。自分の“好きな怖さ”を見つける旅に出て、まだ体験したことのない恐怖の扉を開いてみてください。