フランス発のホラー映画10選｜“フレンチ4大”恐怖作を含む傑作集

内臓がねじれ、血が噴き出し、理性が崩壊していく──。

それが、フレンチ・ホラーの恐怖です。

ただ怖いだけじゃない。痛み、狂気、暴力、そして美しさ。
フランスのホラー映画は、人間の奥底に眠る本能や倫理観を容赦なく揺さぶってきます。

本記事では、“フレンチ・エクストリーム”四天王と呼ばれる代表作から、
近年注目のアート系スリラーやスプラッターまで、フランス発の傑作ホラー映画10本を厳選してご紹介。

あなたの感覚を、根こそぎ引きずり込む覚悟はできていますか？

“フレンチ4大”を含む恐怖の傑作集｜フランス発ホラー映画おすすめ10選

タイトル	ジャンル	怖さ
屋敷女	スラッシャー・サバイバル
マーターズ	拷問・宗教・哲学
フロンティア	人肉・サバイバル
ハイテンション	スラッシャー・どんでん返し
TITANE／チタン	変身・ボディホラー
RAW〜少女のめざめ〜	カニバリズム・成長譚
呪術召喚／カンディシャ	悪霊・都市伝説
スパイダー／増殖	モンスター・感染
動物界	スピリチュアル・異世界
群がり	昆虫・スリラー

屋敷女

公開年	制作国	上映時間
2007年	フランス	84分

映画紹介：
「これ以上の地獄があるのか」──そんな言葉がぴったりの本作『屋敷女』は、フレンチ・エクストリームの代表格として名高い伝説的ホラー映画。妊婦の家に夜な夜な現れる“謎の女”との、容赦なき死闘が描かれます。

舞台はクリスマス・イヴ。事故で夫を亡くした妊婦サラのもとに、黒ずくめの女が「家に入れて」と訪ねてくる──そこから始まるのは、完全密室・超絶バイオレンスのサバイバル。ハサミ、包丁、炎…家庭内のあらゆるものが凶器へと変貌し、あっという間に“戦場”と化す家。

この映画の恐ろしさは、妊婦に対して容赦ゼロな演出にあります。お腹の赤ちゃんが狙われる、という禁忌を突いた設定は、観る者に根源的な不安と嫌悪を突きつける。グロ描写も激しく、序盤からラストまで緊張が途切れない。

「痛み」と「母性」がぶつかり合う、息もできない84分。フレンチ・ホラーが世界を震撼させた理由を知りたければ、まずはこの作品を観てほしい。

マーターズ

公開年	制作国	上映時間
2008年	フランス	99分

映画紹介：
「精神の限界」を描いた、観る者を試すホラー映画──それが『マーターズ』です。
フランスのホラー史において、そして世界の映画史においても異質すぎるこの作品は、“恐怖”という言葉の枠を遥かに超えています。

物語は、幼い頃に監禁・拷問されていた少女ルーシーが、ある日復讐を果たすところから始まる。しかしそれは、本当の地獄の“入口”でしかなかった──。親友アンナとともに明かされていく真実、そして人間が到達しうる“殉教”の果てとは？

この映画の恐ろしさは、肉体的な拷問だけではありません。観る者の精神そのものを削ってくる構成と映像。加害と被害が交錯し、善悪の境界がぼやける中で、「痛みと悟り」をテーマにした哲学的な問いが突き刺さります。

過激な描写ゆえに賛否が分かれる問題作ですが、映画体験としての衝撃度は間違いなくトップクラス。ただ怖いだけのホラーを求めているなら観ない方がいい。これは「魂を削る映画」です。

フロンティア

公開年	制作国	上映時間
2007年	フランス	108分

映画紹介：
『フロンティア』は、人肉・拷問・差別・極右思想…あらゆる過激要素を詰め込んだ、怒涛のバイオレンス・ホラー。サスペンスとしてもスプラッターとしても一級品の完成度を誇ります。

舞台は暴動が吹き荒れるパリ。逃亡中の若者たちがたどり着いたのは、田舎にある一軒の宿。優しそうな家族が迎えてくれるも、彼らの正体はなんとネオナチの人肉カニバリスト。外界から隔絶された空間で、主人公たちはまさに“屠殺”される側へと追い込まれていきます。

本作の見どころは、スピード感ある展開と絶え間ない暴力描写。一息つく間もなく、逃げる→捕まる→拷問→反撃の連続。画面からは血と汗と鉄のにおいが立ちのぼり、観ているだけで息が詰まる。

『悪魔のいけにえ』や『ディセント』を彷彿とさせつつも、フランス映画らしい政治性と社会批判も内包。パワフルでグロテスク、だけど考えさせられる──そんな一作です。

ハイテンション

公開年	制作国	上映時間
2003年	フランス	91分

映画紹介：
『ハイテンション』──タイトル通り、最初から最後まで一切息が抜けない超密度スラッシャー。
フレンチ・ホラーを世界に知らしめた金字塔として、多くのファンの記憶に焼きついています。

主人公マリーは、大学の親友アレックスと共に田舎の家を訪れるが、夜中に突然“ある男”が現れ、家族を次々と惨殺。逃げるでもなく、追うでもなく、マリーは“ある選択”をして物語は思わぬ方向へと転がっていきます。

徹底した緊張感と無音の恐怖、そして狂気が渦巻く中盤以降の展開には、観ている側も“冷や汗”が止まりません。画面に映る血の匂いすら感じられるほど、映像と演出が圧倒的にリアル。

クライマックスで明かされる衝撃のどんでん返しは、賛否を呼びつつも一度観たら忘れられない。ホラーとして、そしてサイコスリラーとして、全ての神経をすり減らす映画体験がここにあります。

TITANE／チタン

公開年	制作国	上映時間
2021年	フランス	108分

映画紹介：
『TITANE／チタン』は、肉体の境界とアイデンティティを描いた衝撃のボディホラー。
第74回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した本作は、グロテスクでありながら美しい、唯一無二の“変態映画”です。

幼少期に交通事故で頭蓋骨を損傷し、頭に“チタンプレート”を埋め込まれた主人公アレクシア。成長した彼女は車と性的関係を持つという衝撃の行動を取り、やがてある殺人事件をきっかけに、男の子として別人になりすます逃避行が始まります。

車との交わり、妊娠、身体の変化、そして“擬似家族”との共同生活──ジャンルを飛び越えた奇妙でエモーショナルな物語は、ホラーというよりも“観る体験”に近い。グロテスクなシーンもありますが、それ以上にテーマ性と映像美が光ります。

理解を超えた展開の連続に、賛否は大きく分かれる作品。でも一度ハマれば、“人間とは何か”を問う哲学的な傑作として、心に残るはずです。

RAW〜少女のめざめ〜

公開年	制作国	上映時間
2016年	フランス	99分

映画紹介：
『RAW〜少女のめざめ〜』は、思春期・家族・食欲・アイデンティティを“食人”という極端なモチーフで描いた、フレンチ・ホラーの新境地。グロテスクなのにエモーショナル、暴力的なのに詩的──そんな矛盾を内包した傑作です。

主人公は16歳のジュスティーヌ。獣医大学に入学し、厳しい新入生儀式の中で生肉を口にしたことをきっかけに、異常な“欲望”が目覚めていく。それは単なるカニバリズムではなく、思春期の衝動や姉妹関係と絡み合いながら、観る者の倫理観を揺さぶってきます。

特筆すべきは、エモーショナルな演出と美しすぎるカメラワーク。血や肉を扱っているのに、画面がどこかスタイリッシュ。さらに、ラストに明かされる“ある真実”が、作品全体の印象を一気に変えてくるあたりも見事です。

単なるスプラッターではない、“少女の目覚め”と“受け継がれる業”を描いた芸術的ホラー。カニバル×成長譚という唯一無二のジャンルを体験したい人におすすめ。

呪術召喚／カンディシャ

公開年	制作国	上映時間
2020年	フランス	85分

映画紹介：
『呪術召喚／カンディシャ』は、モロッコの伝承をもとにした都市伝説系ホラー。かつて恋人に裏切られ殺されたという“女性の悪霊”カンディシャを巡り、ティーンたちが恐怖の連鎖に巻き込まれていきます。

主人公のアミールたちは夏休み、ある事件をきっかけにふざけ半分でカンディシャの名を呼んでしまう──その瞬間から次々と男たちが惨殺され、彼女たちは取り返しのつかない“呪い”を呼び起こしたことに気づきます。

全体的にオーソドックスな悪霊召喚モノながら、異文化ホラーとしての味わいや、夜の団地を舞台にした暗く湿った映像は秀逸。特にカンディシャのビジュアルは、神話とスラッシャーの中間的デザインで印象的です。

派手さは控えめですが、“呼んだら来る”というシンプルな恐怖と、ティーンホラーらしいテンポ感が楽しめる一本。軽めのオカルト作品を探している人にはちょうどいい入口かも。

スパイダー／増殖

公開年	制作国	上映時間
2021年	フランス	101分

映画紹介：
『スパイダー／増殖』は、蜘蛛嫌いには絶対におすすめできない、リアルすぎる昆虫系モンスターホラー。巨大化・増殖・感染という不快要素をふんだんに詰め込みつつ、意外にも家族ドラマの軸もある一本です。

奇妙な蜘蛛をひそかに自宅で飼い始めた少年──しかしその蜘蛛は、異常なスピードで巨大化し、繁殖し、部屋という部屋を支配していく。やがて建物全体に“それ”があふれ出し、人々は逃げ場を失っていきます。

CGに頼りすぎず、物理的に存在感のあるクリーチャー描写が強烈。天井から足音が聞こえる、影が這ってくる…そんな“生活空間が襲われる”恐怖がじわじわ効いてきます。

単なるモンスター映画にとどまらず、人間関係や家族の崩壊と再生も描かれており、ホラーファン以外でも意外と楽しめるはず。とはいえ、蜘蛛が苦手な人は閲覧注意です。

動物界

公開年	制作国	上映時間
2023年	フランス	102分

映画紹介：
『動物界』は、人間と動物の境界があいまいになる世界で、親子の逃避行を描く異色のSFファンタジーホラー。派手な恐怖演出は少なめながら、じわじわと不安を煽ってくる独特の空気感が魅力の作品です。

原因不明の突然変異で人間が“獣化”していく中、少年エミールは自身の家族がその現象に関わっていることを知り、父親と共に真実を追いながら森の中をさまよいます。次第にエミールの体にも異変が…。

この作品は、ホラーというより変身やアイデンティティの喪失を静かに描くスピリチュアル・スリラー。動物のように走り、鳴き、狩るようになる人々の姿は、不気味というよりも“悲哀”すら感じさせます。

エンタメ性は控えめですが、自然と人間、進化と狂気の境界を静かに問いかけてくる一本。ホラーとしては物足りなさもありますが、“異形になっていくことの孤独”に胸を打たれる人もいるでしょう。

群がり

公開年	制作国	上映時間
2020年	フランス	101分

映画紹介：
『群がり』は、食糧問題・環境問題・母の愛といった現代的テーマを、イナゴの大群という異様な存在を通して描いたエコ×ホラー作品。ジワジワと精神を蝕むような“静かなる狂気”が魅力です。

シングルマザーのヴァージニーは、自身が営む養殖場でイナゴを育てていたが、ある日彼らが“血”の味を覚えたことをきっかけに異常増殖。やがて制御不能となったイナゴたちは、家族や村人たちを襲い始める──。

本作の特徴は、母性と狂気の境界が曖昧な描写。生活のためとはいえ、生物を操作し、結果として人間社会に災厄をもたらしてしまう彼女の姿は、愛とエゴの境界を問いかけてきます。

イナゴの襲撃シーンはそこまで派手ではありませんが、“音”と“影”の演出がとにかく不快かつ効果的。
昆虫が苦手な人にとっては十分にトラウマ級の一本です。

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“フランス発”ホラーの本気を観よ。

美しく、過激で、そしてどこまでも深く残る──それがフレンチ・ホラーの魅力です。

血しぶきが飛び散るスプラッターから、静かな狂気に満ちたサイコスリラー、そして芸術性すら感じさせるアートホラーまで、フランスのホラー映画は常に“限界のその先”を追求してきました。

今回紹介した10本は、その中でも特に魂と精神に響く傑作たち。どれも「ただの怖さ」では終わらず、観る人の価値観や感情に深く突き刺さるはずです。

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