ハリウッドホラー映画おすすめ20選｜本場アメリカが生んだ最恐の名作たち

世界で最も多くの観客を震え上がらせてきたのは、やはり“ハリウッド発”のホラー映画でしょう。

血も凍る悪魔の儀式から、絶望を呼ぶ感染パニック、そして人間の心をえぐる心理的恐怖まで──。

莫大な製作費と卓越した映像技術、そして観客を徹底的に怖がらせようとする演出力。ハリウッドが生んできた恐怖の名作は、ただ怖いだけでなく“世界基準のエンタメ”として私たちを惹きつけてやみません。

今回は数ある作品の中から「ハリウッドホラー映画おすすめ20選」を厳選。
クラシックから最新作まで、映画史に刻まれる伝説級の恐怖を余すことなく紹介します。

本場アメリカが仕掛ける恐怖の数々──その洗練された悪夢に、あなたは耐えられるでしょうか？

ハリウッドホラー映画おすすめ20選｜本場アメリカが生んだ最恐の名作

タイトル	ジャンル	怖さ
サイコ	サスペンス・スラッシャー
エクソシスト	悪魔・オカルト
オーメン	悪魔・不吉
ハロウィン	スラッシャー
エルム街の悪夢	スラッシャー・超常
シャイニング	心理・心霊
ジョーズ	モンスター・パニック
エイリアン	SF・モンスター
遊星からの物体X	SF・クリーチャー
プレデター	SF・アクションホラー
スクリーム	メタ・スラッシャー
ブレア・ウィッチ・プロジェクト	モキュメンタリー
ザ・リング（ハリウッド版）	心霊・呪い
ドーン・オブ・ザ・デッド	ゾンビ・パニック
パラノーマル・アクティビティ	心霊・POV
死霊館	心霊・オカルト
イット “それ”が見えたら、終わり。	クラウン・スーパーナチュラル
アス	スリラー・ドッペルゲンガー
ブラック・フォン	誘拐・サスペンスホラー
ゲット・アウト	社会派・心理

サイコ

公開年	制作国	上映時間
1960年	アメリカ	109分

映画紹介：
アルフレッド・ヒッチコックの金字塔。『サイコ』は、殺人の残酷さではなく「演出の刃」で観客の神経を切り刻む。わずかなカットと音で恐怖を膨張させ、想像力に仕事をさせる──映画が「どこまで観客を操れるか」を証明した歴史的到達点です。

旅の途中で立ち寄ったモーテル、無垢なシャワーカーテン、そしてナイフのきらめき。血しぶきを過度に見せないのに、全身の体温を奪う“あのシーン”は、今なお映画史上最も語られる瞬間の一つ。バーナード・ハーマンのストリングスが、胸郭の奥を直に掻きむしります。

物語の核にいるのは青年ノーマン・ベイツ。彼の微笑みと寂しさ、そして母への執着は、当時のハリウッドが踏み込まなかった領域まで人間心理をえぐり出した。スリラーとホラーの境界線を曖昧にし、ジャンルの地図を書き換えたのがこの作品です。

映画は“見せる”だけではない。「見せないことで見せる」。その恐怖の設計図を今なお学べる、原点にして頂点の一本。

エクソシスト

公開年	制作国	上映時間
1973年	アメリカ	122分

映画紹介：
“悪魔が本当にいるのか”という問いに、映画が全身で答えた金字塔。『エクソシスト』は、少女に起きる不可解な症状を医学と信仰の間で葛藤しながら解きほぐしていく過程を、極限のリアリティで積み上げる。見せ場の悪魔祓いだけでなく、そこに至るまでの不安と無力感こそが恐怖の核だ。

母が娘を救おうともがく家庭ドラマ、信仰に揺らぐ神父の内面、そして夜の階段を覆う冷気。演出は決して誇張に走らず、日常の温度を一段ずつ下げていくように観客を追い詰める。少女の発する言葉や声、わずかな視線のズレが、部屋の空気を一変させる瞬間は何度見ても背筋が強張る。

後半の儀式は“祈り”と“対話”の持久戦。派手なエフェクトよりも、信念と疑念がぶつかる音が画面から響いてくる。アイコニックなテーマ曲と路地の街灯が、映画史に刻まれた“夜”の原風景を作り上げた。

ホラーの枠を越え、信仰・科学・親子の愛が交差する人間ドラマとして屹立。“恐怖の説得力”とは何かを学べる、決定的一本。

オーメン

公開年	制作国	上映時間
1976年	アメリカ	111分

映画紹介：
『オーメン』は、1970年代のホラー黄金期を代表する“悪魔の子供”映画の金字塔。政治と宗教、そして家庭を舞台に、「運命が決まっている恐怖」を徹底して描いた一本です。誕生日パーティーでの惨劇や、謎めいた死の連鎖は、どのシーンも冷たい運命に導かれているかのよう。

ダミアンという幼子の存在が、物語全体を覆う不気味さの源泉。彼自身が直接暴れることはほとんどないのに、周囲で次々と起こる不幸と死が観客を震え上がらせる。これは血や暴力ではなく、「抗えない宿命」という目に見えない刃で切り裂いてくる恐怖なのです。

音楽の使い方も特筆すべき。ラテン語の合唱が響く主題歌「アヴェ・サタニ」は、映画音楽史に残る不気味さを誇り、ダミアンの存在を宗教的なスケールで拡張させます。“サウンドだけで祟りを呼び込む”ような迫力は唯一無二。

『エクソシスト』が“悪魔そのもの”を描いたとすれば、『オーメン』は“悪魔が生まれてしまった世界”を描いた作品。見終えたあと、子供の笑顔すら不吉に見える後味を残します。

ハロウィン

公開年	制作国	上映時間
1978年	アメリカ	91分

映画紹介：
ジョン・カーペンター監督による『ハロウィン』は、スラッシャー映画の原点にして頂点。真っ白なマスクをかぶった殺人鬼マイケル・マイヤーズが、ハロウィンの夜に静かな町を恐怖で包み込む──そのシンプルな筋立てが、世界中の観客を震え上がらせました。

本作の真髄は、「どこにでもいる町の恐怖」を徹底的に描いたこと。普段と変わらない住宅街の風景が、一度マイケルの姿が現れるだけで凍りついた舞台へと変貌します。観客は「次はどこから現れるのか」と息を止め、画面を凝視するしかありません。

さらに忘れてはならないのが、監督自身が手掛けた不気味なテーマ曲。繰り返し鳴り響くピアノの旋律が、マイケルの不気味な存在感を増幅し、音と映像の一体感による恐怖を完成させました。

以降のスラッシャー映画に決定的な影響を与えた本作。『ハロウィン』を観ずして、アメリカのホラー映画史は語れません。

エルム街の悪夢

公開年	制作国	上映時間
1984年	アメリカ	91分

映画紹介：
ウェス・クレイヴン監督が生んだ伝説的ホラー『エルム街の悪夢』は、夢と現実の境界を溶かして観客を恐怖に引きずり込むスラッシャー映画の革命作。登場する殺人鬼フレディ・クルーガーは、ただの怪物ではなく、眠りという逃げ場をも奪う存在としてホラー史に刻まれました。

フレディは、焼けただれた顔に赤と緑のセーター、鋭利な爪を備えた手袋という強烈なビジュアルで、一瞬で観客の記憶に焼き付くキャラクター。「眠ったら殺される」というルールは、誰もが日常的に行う行為を恐怖に変えるアイデアとして圧倒的に斬新でした。

血の噴き出すベッドシーン、壁からフレディの顔が浮かび上がるショットなど、特殊効果の工夫も満載。限られた予算の中で、観客を夢の迷宮へと誘い込む演出力は、今なお語り継がれています。

以降、フレディは続編・リメイク・クロスオーバーでホラーアイコンの仲間入り。ホラーがキャラクターで愛される時代を切り開いた作品です。

シャイニング

公開年	制作国	上映時間
1980年	アメリカ	146分

映画紹介：
スタンリー・キューブリック監督がスティーヴン・キング原作を映像化した『シャイニング』は、心理的恐怖と映像美が融合したホラー映画の最高峰。「閉ざされた空間で狂気が増幅する恐怖」をこれほど鮮烈に描いた作品は他にありません。

雪に閉ざされたホテルで管理人一家が過ごす冬。父ジャックが次第に精神をむしばまれていく過程は、幽霊の存在以上に人間の内側に潜む狂気を突きつけます。双子の少女や血のエレベーターといった象徴的なイメージは、映画史に残る恐怖のアイコンとなりました。

特にジャック・ニコルソンの怪演は圧巻。「Here’s Johnny!」の台詞と狂気の表情は、観客の脳裏に焼き付き離れません。映像は冷徹なほど計算され、廊下を進むステディカムのカメラは、観客自身を迷宮へと引きずり込みます。

『シャイニング』は単なるホラーを超え、“恐怖の美学”を極めた芸術作品。何度観ても新しい恐怖が潜んでいる、究極の心理ホラーです。

ジョーズ

公開年	制作国	上映時間
1975年	アメリカ	124分

映画紹介：
スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』は、「海が怖い」という感覚を世界中に植え付けた伝説的パニックホラー。人間を襲う巨大ホオジロザメの恐怖を描きながら、アメリカ映画における“サマー・ブロックバスター”の始まりを告げた作品でもあります。

冒頭の水中シーンから観客は息を呑む。獲物を狙うサメの視点、徐々に近づく不穏な音楽、そして突然の悲鳴──。実際にサメを映すことが少ないにもかかわらず、「見えないものが迫る恐怖」を極限まで高めていきます。

後半では保安官、海洋学者、漁師という三者三様のキャラクターが船に乗り込み、人間対自然の死闘が繰り広げられる。恐怖だけでなく、冒険映画としての高揚感も併せ持ち、観客を最後まで惹きつけます。

音楽もまた映画史に残る要素。ジョン・ウィリアムズの不穏な二音フレーズは、「聞こえたら何かが来る」という条件反射を生み出し、シンプルながら最恐のトリガーとなりました。

エイリアン

公開年	制作国	上映時間
1979年	アメリカ	117分

映画紹介：
リドリー・スコット監督の『エイリアン』は、SFとホラーを融合させた金字塔。広大な宇宙を舞台にしながら、物語の恐怖はきわめて密室的で、「逃げ場のない閉塞感」が全編を支配します。宇宙船ノストロモ号の乗組員が未知の生命体と遭遇する瞬間から、観客は息を止めるしかありません。

最も有名なのは「チェストバスター」のシーン。穏やかな食事の場が突如惨劇に変わり、エイリアンが胸を突き破って出現する描写は、映画史上もっとも衝撃的な恐怖演出の一つに数えられています。観客だけでなく、現場の俳優たちも演技を超えて戦慄した逸話は有名です。

エイリアンのデザインはH・R・ギーガーによるもの。官能的でありながら死を想起させる独特のフォルムは、以降のクリーチャーデザインに決定的な影響を与えました。「存在そのものがトラウマ」となるビジュアルは、一度見たら忘れられません。

シガニー・ウィーバー演じるリプリーは、ホラー史に残る“最強の女性主人公”としても高く評価され、シリーズの象徴に。『エイリアン』はホラーの恐怖とSFのスケールを見事に両立させた不朽の傑作です。

遊星からの物体X

公開年	制作国	上映時間
1982年	アメリカ	109分

映画紹介：
ジョン・カーペンター監督による『遊星からの物体X』は、SFホラーの金字塔にして“不信の恐怖”を極限まで描いた作品。南極基地という閉ざされた環境で、姿を自由自在に模倣する異星生命体が人間社会を内部から崩壊させていく様を描きます。

最大の恐怖は、このクリーチャーが「誰にでも化けられる」という設定。次に感染者となるのは仲間か、自分か──疑心暗鬼が膨らむ状況で、人間同士の信頼が崩壊していく過程こそが観客を凍りつかせます。視覚的なショック以上に、精神的な緊張感が張り詰めるのです。

特殊効果はロブ・ボッティンが担当。肉体が引き裂かれ、ねじれ、異形の怪物へと変容する場面は、当時の技術の極致であり、今見ても圧倒される実写表現。CG全盛の今だからこそ、アナログの生々しさが際立ちます。

冷たく広大な南極の孤独感もまた重要な要素。「誰も助けに来ない」という環境設定が、恐怖をさらに深いものにしています。人間不信と孤立、そして未知の侵略──『物体X』はジャンルを超えた究極のサバイバルホラーです。

プレデター

公開年	制作国	上映時間
1987年	アメリカ	107分

映画紹介：
『プレデター』は、アクションとホラーが融合した異色のモンスター映画。ジャングルを舞台に、特殊部隊と未知の狩猟生物プレデターが死闘を繰り広げる物語は、“人間が狩られる側に回った恐怖”を描き出しました。

前半は軍事アクション映画のように進行しますが、プレデターが姿を現すと一気に空気が変わる。光学迷彩でジャングルに溶け込み、獲物を一人ずつ仕留めていく姿は、“見えない敵に追われる恐怖”そのもの。銃火器が通じないという絶望感も緊張を高めます。

プレデターのデザインはスタン・ウィンストンが担当。特徴的なマスクやドレッド状の髪、そして外した時に現れる異形の素顔は、ホラー史に残るインパクトを誇ります。観客を魅了しながら恐怖させる、まさに“ハンターとしての美学”を体現した存在です。

アーノルド・シュワルツェネッガー演じる主人公との一騎打ちは、肉体と知恵の戦いとして圧倒的な見応え。『プレデター』はアクション映画でありながら、ホラー的緊張感を兼ね備えた稀有な名作です。

スクリーム

公開年	制作国	上映時間
1996年	アメリカ	111分

映画紹介：
ウェス・クレイヴン監督による『スクリーム』は、90年代ホラーの息を吹き返した革命的作品。スラッシャー映画の定番を踏まえつつ、それを観客に「分かっているだろ？」と突きつけるメタ的な仕掛けが魅力です。ゴーストフェイスのマスクは、いまやホラーアイコンの一つに数えられます。

冒頭のドリュー・バリモア演じる女子高生が電話で殺人鬼と会話するシーンは、映画史に残る緊張感の極致。「ホラー映画で最初に死ぬのは誰か」というメタジョークを交えながら、観客を恐怖とユーモアの狭間で翻弄していきます。

物語の軸は、次々と襲われる高校生たちと、その背後にある連続殺人事件。ホラー映画の“お約束”を熟知した犯人が仕掛ける展開は、スラッシャーを観慣れた観客ほどニヤリとしつつ、同時に背筋を凍らせる巧妙さです。

ホラーのクリシェを逆手に取りながら、新しい恐怖を提示した『スクリーム』。以降のシリーズやパロディを生み出したその影響力は絶大で、90年代以降のホラー映画の方向性を変えたと言っても過言ではありません。

ブレア・ウィッチ・プロジェクト

公開年	制作国	上映時間
1999年	アメリカ	81分

映画紹介：
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、低予算ながら世界中を震撼させたモキュメンタリーホラーの金字塔。森での学生たちの失踪事件を題材に、「これは本物の映像かもしれない」と思わせるリアリティで観客を釘付けにしました。

手持ちカメラの揺れ、荒い映像、途切れ途切れの会話。あえて“何も映さない”ことで、観客の想像力が最大限に働きます。「見えない恐怖」がこれほどまでに強烈に迫ってきた映画は他にありません。

特筆すべきはマーケティング戦略。当時インターネット黎明期に「実際の事件映像」として宣伝され、口コミで世界中に広まったのです。わずか数万ドルの制作費で、全世界で2億ドル以上を稼ぎ出した伝説的成功例となりました。

ラストの“壁に向かって立つ男”の映像は、直接的な描写がないにも関わらず、観客の脳裏に強烈な恐怖を刻み込みます。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』は、ホラーの新しい表現方法を切り開いた歴史的作品です。

ザ・リング（ハリウッド版）

公開年	制作国	上映時間
2002年	アメリカ	115分

映画紹介：
日本の名作ホラー『リング』をハリウッドがリメイクしたのが『ザ・リング』。貞子にあたる存在“サマラ”が、テレビ画面から這い出してくるシーンは、世界中の観客を恐怖で震え上がらせました。「呪いのビデオ」という設定を、アメリカ的スケールと映像表現で再構築した作品です。

主演のナオミ・ワッツが演じる女性記者が、呪いの謎を追う展開はスリラー要素も強く、ただ怖いだけでなく謎解きの面白さも兼ね備えています。雨に濡れた映像や青みがかった画面処理は、全編にわたって不穏な空気を漂わせる演出となっています。

サマラの過去に迫るドラマパートは、ホラーに切なさを加える要素として効果的。彼女の怨念がどこから来たのかを探る過程で、ただの怪異ではなく人間の悲劇が恐怖の根源であることを浮き彫りにします。

Jホラーの冷たい恐怖を保ちつつ、映像面ではよりショッキングに仕上げた『ザ・リング』。リメイクながらオリジナルと並ぶ名作として評価され、ハリウッドに“ジャパニーズホラー・リメイクブーム”を巻き起こしました。

ドーン・オブ・ザ・デッド

公開年	制作国	上映時間
2004年	アメリカ	101分

映画紹介：
ジョージ・A・ロメロ監督の名作『ゾンビ』（1978年）のリメイクとして誕生した『ドーン・オブ・ザ・デッド』（2004年版）。監督は後に『ジャスティス・リーグ』でも知られるザック・スナイダーで、疾走するゾンビの恐怖を初めて大規模に提示した衝撃作です。

舞台はゾンビによって崩壊した世界。生存者たちがショッピングモールに立てこもり、迫り来る大群と絶望的なサバイバルを繰り広げます。「日常の象徴＝モール」が、恐怖と死の檻へと変貌していく構造は、現代社会への痛烈な風刺も感じさせます。

最大の特徴は、ゾンビの動き。従来のゆっくり歩くタイプではなく、走って襲いかかる姿は観客に強烈な緊張感を与えました。「止まれない恐怖」がリアルタイムで押し寄せ、観客もキャラクターと同じく逃げ場を失います。

アクション性とスピード感に満ちたリメイクは、ロメロ版とはまた異なる魅力を提示。ゾンビ映画の新たな方向性を決定づけた、21世紀を代表するゾンビホラーです。

パラノーマル・アクティビティ

公開年	制作国	上映時間
2007年	アメリカ	86分

映画紹介：
わずか1万5千ドルの低予算で製作されながら、全世界で2億ドルを超える興行収入を叩き出した伝説のPOVホラー。『パラノーマル・アクティビティ』は、固定カメラで“何も起こらない時間”を積み重ねることで、恐怖を最大化した革新的な作品です。

舞台は一軒家。カップルが寝室に設置したカメラが記録するのは、かすかな足音やドアの開閉、布団の揺れといった小さな異変。「何もないのに怖い」という体験を観客に味わわせ、夜が来るたびに緊張感が増していきます。

特に印象的なのは、寝ている女性がベッドの横に長時間立ち尽くすシーン。画面にはほとんど動きがないのに、得体の知れない悪意が充満する恐怖表現は、以降のホラー映画に多大な影響を与えました。

大きな見せ場や派手な特殊効果はなくても、「そこに何かがいるかもしれない」と観客に信じ込ませる力を持つ本作。ホラーはアイデアと演出で成立することを証明した傑作です。

死霊館

公開年	制作国	上映時間
2013年	アメリカ	112分

映画紹介：
ジェームズ・ワン監督による『死霊館』は、実在の心霊研究家エド＆ロレイン・ウォーレン夫妻の体験を基にしたオカルトホラー。クラシックなゴースト描写と最新の演出を融合させ、2010年代ホラーの金字塔として世界的ヒットを記録しました。

舞台はアメリカの田舎町に建つ一軒家。引っ越してきた一家が不可解な現象に悩まされ、ウォーレン夫妻に助けを求めるという王道展開ですが、演出のキレ味が違います。暗闇に潜む影、背後に忍び寄る気配、そして“何も起きない時間”の緊張感の積み重ねが、観客をじわじわと追い詰めます。

特に有名なのが「かくれんぼ」のシーン。手拍子の音が暗闇から響き、誰もいないはずの場所に恐怖を呼び込む演出は、まさにジェームズ・ワンの真骨頂。観客の想像力を刺激して恐怖を増幅させる手法が光ります。

『死霊館』は単独でも完成度が高い一作でありながら、その後『アナベル』や『シスター』へと広がる“死霊館ユニバース”の出発点でもあります。現代ホラーにおける大黒柱的存在と言えるでしょう。

イット “それ”が見えたら、終わり。

公開年	制作国	上映時間
2017年	アメリカ	135分

映画紹介：
スティーヴン・キング原作を新たに映画化した『イット』は、ピエロの姿をした怪異“ペニーワイズ”が子どもたちを脅かす物語。「恐怖の象徴＝ピエロ」を世界中に再認識させた作品であり、ホラー映画の新時代を告げる一作となりました。

舞台は田舎町デリー。行方不明事件が相次ぐ中、子どもたちが自分たちの恐怖と向き合いながら怪異に立ち向かいます。友情と成長を軸にした青春映画の要素があることで、観客は登場人物に強く感情移入し、そのぶん恐怖が一層鋭く突き刺さります。

ペニーワイズを演じたビル・スカルスガルドの怪演も圧巻。笑顔と恐怖を同居させる表情や、不自然な動きは観客のトラウマを直撃します。赤い風船がふわりと漂うだけで、「何かが起こる」と確信させる演出は見事です。

ホラーと青春ドラマが融合した本作は、ただ怖いだけでなく「子ども時代に抱えた恐怖」を描いた普遍的な物語。続編『チャプター2』へとつながる物語の第一章としても完成度の高い傑作です。

アス

公開年	制作国	上映時間
2019年	アメリカ	116分

映画紹介：
『ゲット・アウト』で一躍ホラー界の旗手となったジョーダン・ピール監督が放った第2弾『アス』。幸せな家族の前に突如現れる“自分たちそっくりの存在＝ドッペルゲンガー”を描いた本作は、「自分自身が最大の恐怖」というテーマを鋭く提示しました。

舞台は夏の休暇先。平穏な時間を過ごす家族の前に、赤いジャンプスーツを着た彼らのコピーが現れる瞬間の衝撃は、観客に逃げ場のない恐怖を突きつけます。外見は同じでも、動きや声、表情がどこか歪んでいることで、“似て非なるものの不気味さ”が際立ちます。

ルピタ・ニョンゴの怪演も見逃せません。母親と“もう一人の母親”を演じ分け、そのギャップが物語全体の緊張感を支配。家族という安心の象徴が崩壊する怖さを見事に体現しています。

社会的な寓話性も濃厚で、富と貧困、表と裏という二重構造をホラーに落とし込んだ本作。単なるスリラーを超え、「自分が自分でなくなる恐怖」を観客に叩きつける一作です。

ブラック・フォン

公開年	制作国	上映時間
2021年	アメリカ	103分

映画紹介：
スコット・デリクソン監督による『ブラック・フォン』は、誘拐サスペンスと心霊ホラーが融合した新感覚スリラー。主人公の少年が地下室に監禁され、そこにある黒電話を通じて過去の犠牲者たちの声を聞くという設定が観客の恐怖を刺激します。

誘拐犯“グラバー”を演じるのはイーサン・ホーク。普段の善良なイメージを覆す怪演で、不気味なマスクと挙動は強烈なトラウマを残します。彼の存在感は、単なる殺人鬼を超えた“恐怖の象徴”として作品を支配しています。

黒電話から聞こえるのは死んだ子どもたちの声。彼らの助言をもとに少年が脱出を試みる展開は、サスペンスの緊張感とホラー的恐怖が巧みに絡み合い、最後まで観客を離しません。

現実の誘拐事件を想起させるリアルさに、霊的要素が加わることで唯一無二の恐怖を作り出した本作。「子どもが犠牲になる怖さ」を真正面から描いた近年屈指の問題作です。

ゲット・アウト

公開年	制作国	上映時間
2017年	アメリカ	104分

映画紹介：
ジョーダン・ピール監督の長編デビュー作『ゲット・アウト』は、ホラーに社会風刺を織り込んだ異色のサイコスリラー。黒人青年が白人の恋人の実家を訪れる物語が、次第に恐怖と狂気へと転落していく過程は、現代社会の闇を鋭くえぐり出す仕掛けに満ちています。

郊外の豪邸での歓迎ムードが、どこか不自然に張り付いた笑顔や違和感によって徐々に不穏へと変わっていく。観客は主人公と同じ視点で、「何かがおかしい」という不安を募らせながら物語に引き込まれていきます。

やがて明らかになる“入れ替え”の真相は、単なるホラーを超えて人種差別や権力構造への痛烈な批評となっています。「恐怖の裏にある社会問題」を突きつけたことで、本作はアカデミー賞脚本賞を受賞する快挙を達成しました。

緻密な演出と巧妙な伏線、そして不気味な笑顔に覆われた狂気。『ゲット・アウト』はホラーの枠を超え、現代における“必修映画”と呼ぶにふさわしい作品です。

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ホラー映画の中心地といえば、やはりハリウッドです。圧倒的な製作規模と映像技術、そして観客を徹底的に怖がらせる演出力によって、世界基準の恐怖を次々と生み出してきました。

オカルト、スラッシャー、モンスター、心理スリラー──そのジャンルは多岐にわたり、ホラーの多様性と可能性を証明してきたのもハリウッド作品の大きな魅力です。ただ怖いだけでなく、社会性や人間ドラマを織り込むことで、映画としての厚みも兼ね備えています。

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